遺言書を保管・発見された方へ

【設例】

 先日、Xの父A(札幌市在住)が亡くなりました。XがAの遺品を整理していたところ、Aの机の引き出しの中から表に「遺言書」と書かれ、その裏にAの名前が記載された封書が見つかりました。Aの相続人はXとXの姉(Y)の二人です。封書を見つけたXは、今後、どうすればよいでしょうか。

1 遺言書を発見した人は何をしなければならないのでしょうか

 今回のように遺言者が亡くなった後に、相続人が遺言書(封書)を発見した場合、その相続人は一定の手続を取らなければなりません。この手続のことを検認といいます。以下では、上記設例をもとに検認について詳しく説明します。

2 検認とはどのような制度でしょうか

 検認とは、遺言書の偽造や変造を防ぎ、遺言書の形状その他の状態を調査確認するための一種の証拠保全の手続です。

 もっとも、すべての遺言書について検認を受けなければならないというわけではありません。公正証書遺言、法務局保管の自筆証書遺言のように偽造や変造のおそれがない遺言書は検認を受ける必要はありません。しかし、それ以外の遺言書については、家庭裁判所で検認を受けなければなりません。

 本件でXが発見した封書は、自宅保管の自筆証書遺言であるため、検認を受ける必要があります。

3 検認を受けるためには具体的にどうすればよいでしょうか

 遺言書の保管者や、保管者がいない場合には遺言書を発見した相続人は、遺言書の検認を受けるため、遺言者の住所地を管轄する家庭裁判所において、検認の請求を行う必要があります。本件では、Aの住所地が札幌市であるため、札幌家庭裁判所に検認の申立書を提出して検認の請求を行うことになります。

 また、申立書には戸籍謄本等の書類を添付する必要があります。本件では、Aの出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本、X及びYの戸籍謄本が必要となります。

4 家庭裁判所では具体的にどのようなことが行われますか

 検認の申立てを受けた家庭裁判所は、検認の期日を指定して、申立人及び相続人に対して検認の期日を通知します。これにより、申立人だけでなく、他の相続人にも検認期日に出席する機会が保障されます。

 申立人は、指定された検認期日に遺言書原本を家庭裁判所に持参します。

 裁判官は、封が閉じられた遺言書については開封のうえ、遺言書及び封筒の紙質、形状、文言、字体、加除訂正箇所、日付、署名、印影その他の外部状態についての見分を行い、立ち会った申立人及び相続人にこれを示します。その際、必要に応じて、裁判官から立ち会った申立人及び相続人に質問を行うことがあります。質問する事項について特に決まりはありませんが、保管・発見の経緯や遺言書の筆跡・印影が遺言者のものであるかどうか等について、質問することがあります。

 本件では、申立人であるXは、検認期日に必ず遺言書原本を札幌家庭裁判所に持参しなければなりません。なお、Yが出席しなくても検認期日は実施されることになります。その場合は、後日、遺言書の検認がされた旨を札幌家庭裁判所からYに通知することになります。

5 検認したときの記録は残されるのですか

 検認後、家庭裁判所の書記官は、検認調書を作成して、立ち会った相続人や裁判官の質問に対して相続人が答えた内容等が記録されます。遺言書及び封筒の紙質、形状、文言、字体、加除訂正箇所、日付、署名、印影その他の外部状態については、「末尾添付の等倍写しのとおりである」などと記載して調書上明らかにすることが一般的です。

6 検認手続きで遺言の有効・無効が判断されるのですか

 検認の手続きは遺言書の有効・無効を審査する手続きではありません。あくまで、遺言書の形式、その他の状態を調査・確認する手続です。

 したがいまして、例えば、Aの遺言の内容がその財産全てをYに遺贈する内容になっていた場合において、Xがその遺言の有効性を争う場合には、Yを相手方として、別途、遺言の有効性を争う訴訟を提起する等の対応が必要となります。

7 最後に

 以上のとおり、遺言の保管者や遺言の発見者は、家庭裁判所で検認の手続きを受けなければなりません。そのためには申立書の作成や添付書類の作成が必要となることに加え、慣れない裁判所への出席も必要となり、ご不安に感じられる方も多いのではないでしょうか。今回の設例はあくまで一つの事例に過ぎず、相続人の範囲等が異なれば添付書類も異なる場合がございます。手続等についてご不明な点等がございましたら、お気軽にご相談ください。

以上

 

 

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