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改正相続法について

◆相続法改正における主な改正事項及びスケジュール

・2019年1月13日施行

【遺言】

自筆証書遺言の方式緩和

 

・2019年7月1日施行

【遺産分割】

持戻し免除の意思表示の推定

預貯金の仮払制度

遺産分割前の処分の遺産の範囲

遺産の一部分割

【遺言】

遺言執行者の権限の明確化

遺贈の担保責任

【相続の効力】

権利の承継(対抗要件)

義務の承継

遺言執行者がある場合の相続人の行為等

【遺留分】

遺留分に関する算定方法の明確化等

【特別の寄与】

特別の寄与

 

・2020年4月1日施行

【配偶者保護】

配偶者居住権

配偶者短期居住権

 

・2020年7月10日施行

【遺言】

自筆証書遺言の保管制度

 

◆各改正事項の概略

1 配偶者保護

 ① 配偶者の居住用不動産に関する相続分の引き上げ

 今回の改正により、婚姻期間が20年以上である夫婦間で居住用不動産(居住用建物又はその敷地)の遺贈又は贈与がされた場合については、原則として、遺産の先渡しを受けたものと取り扱う必要がなくなり、その結果、遺産分割における配偶者の取り分が増えることとなりました。

 ② 配偶者居住権の創設

 従来は、配偶者が居住している建物に住み続けるためには、同建物を相続する必要がありました。しかし、今回の改正により、配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合に、配偶者は、遺産分割において「配偶者居住権」を取得することにより、終身又は一定期間、その建物に無償で居住することができるようになりました。

 

2 特別の寄与

 従来は、長男の妻が夫の両親への介護等で貢献しても、相続に際し、妻自身は当該貢献についての請求をすることはできませんでした。

 今回の改正により、相続人でない親族が、無償での療養看護等の労務提供により、被相続人の財産の維持・増加に寄与した場合、当該寄与に応じた額の金銭を相続人に請求できることとなりました。

 

3 遺言制度

① 自筆証書遺言の要件緩和

 自筆証書遺言(自身で作成する遺言)については、これまで、その全文、日付及び氏名を自署しなければなりませんでした。

 改正法では、自筆証書に財産目録を添付する場合、その財産目録は自署不要(ワープロ・コピーで構わない)となりました。なお、同目録の各ページに署名押印が必要です。

② 自筆証書遺言の保管制度

 自筆証書遺言は、これまで、作成後にどこに保管するのかという問題がありました。また、亡くなられた後に相続人による検認の手続(遺言の発見者等が家庭裁判所にて確認を求める手続)が必要とされていました。

 このような問題を解決するため、自筆証書遺言を法務局で保管する制度が新設されました。この制度により法務局で保管された遺言について、遺言者は閲覧や返還を請求でき、相続人等は、遺言者が亡くなられた後に法務局に対し遺言の保管の有無の確認や閲覧を請求できます。また、法務局で保管される遺言については検認の手続が不要とされています。

③ 遺言執行者の権限の明確化

 改正前民法では、遺言執行者(遺言の内容に従いこれを執行する者)の法的な地位が必ずしも明確ではありませんでした。

 改正法では、  遺言執行者の法的な地位が明確化されるとともに、遺言執行者が自己の責任により第三者に任務を負わせることができるようになる等の点が変更されています。

 

4 遺留分制度

 従来は、遺留分減殺請求がされると、すべての相続財産が受遺者(遺言により財産を受け取った者)と遺留分減殺請求者の共有になると解されていました。もっとも、この場合、共有となった不動産の売却が困難になるなど、現実的には様々な不都合が発生していました。

 そこで、改正法では、遺留分減殺請求権は、「遺留分侵害額請求権」と変更され、権利を行使した場合に、遺留分侵害額に相当する金銭請求権が発生することとなりました。

 

5 相続制度の合理化

 従来は、「ある相続人に相続させる」という趣旨の遺言等が存在した場合、対象の不動産等については、登記なくして第三者に対抗することができるとされていました。しかし、そのような取扱いでは、遺言の有無及び内容を知り得ない債権者や債務者の利益を害するのみならず、登記制度の信頼を害するとの批判がありました。

 そこで、今回の改正においては、「相続させる」とされた相続人の法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないこととされました。

 

6 預貯金債権等

 従来は、最高裁の平成28年12月19日の決定により、預貯金などの可分債権(複数で分けることが可能な債権)についても遺産分割の対象となるとされ、相続人全員の合意がなければ預貯金が引き出せないこととされていました。これでは、被相続人の債務の返済や相続人の生活費、葬儀費用も支弁できないこととなります。

 このような事態を回避するため、改正法では、一つの金融機関に対し、預貯金債権の3分の1に法定相続分を乗じた金額(上限額150万円)の払戻しを、裁判所の手続を経ることなく請求することができるようになりました。

 

7 遺産分割制度

 従来は、相続人が、被相続人死亡後遺産分割前に被相続人の財産を処分してしまった場合(被相続人の預金を使い込んでしまった場合等)に、処分された財産は、遺産分割の対象財産とすることはできず、別途不法行為や不当利得を理由とした訴訟等で不公平を是正する他ありませんでした。

 そこで、そのような不都合を是正するため、今回の改正において、処分を行った者以外の相続人の同意があれば、処分した相続人の同意を得ることなく、処分された財産を遺産分割の対象に含めることができるようになり、遺産分割手続における一元的な解決が可能となりました。

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