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自分の死後、自分の希望通りに財産を贈るためにはどうしたらいいか (後編)

 

前回(前編)記事はこちら

 

5 私は、長年にわたり子とは疎遠であり、財産は自分の身の回りの世話をしてくれた内縁の妻に全てあげたいと思っています。どのようにしたらいいですか。

(答)

全ての財産を内縁の妻にあげたいとのことであれば、包括遺贈という方法を使えば良いでしょう。

包括遺贈を行うと、被相続人(遺贈者)に属した権利のみならず義務も含めて相続財産の100%が受遺者(本件では内縁の妻)に承継されることになります。

包括遺贈の場合の遺言の文言例は以下の通りです。

「遺言者は、遺言者の有する財産の全部を、遺言者の内縁の妻〇〇に包括して遺贈する」

遺贈された遺産全部は、相続人の一身に専属するもの(例えば、使用貸借における使用借権、公営住宅入居者の使用権、親族の扶養請求権等)を除き、遺贈の効力発生と同時に当然に、権利も義務も含めて相続財産の100%が受遺者に移転します。

全部包括遺贈が第三者(本件では内縁の妻)になされた場合は、本来相続人であった者(本件ではお子さん)が相続から排除されることになります(全部の相続財産が遺産分割の対象から外されます)。

6 全ての財産を内縁の妻に包括遺贈した場合、子から内縁の妻に対して財産の一部を渡すように請求されることはないのですか。

(答)

包括遺贈を行った場合、相続人(本件ではお子さん)は、受遺者(本件では内縁の妻)に対して遺留分侵害額請求権を行使することができます。

このため、包括遺贈の場合には、内縁の妻が遺留分侵害額請求を受けることを想定して支払原資となる現預金が相続財産に確保されているか注意する必要があります。

7 包括遺贈をすると内縁の妻は、必ず相続財産を引き継がなければならなくなりますか。相続財産には借入金もあるのですが、将来、不動産や株式等の評価が下落したとき、支払いに窮するのではないかと心配です。

(答)

包括遺贈の場合、相続人以外の受遺者(本件では内縁の妻)でも相続人と同一の権利義務を有するとされていますので、遺贈を放棄したり、限定承認(プラスの財産の限度で借入金等のマイナスの財産を引き継ぐ形での遺贈を承認すること)したりすることができます。

包括遺贈を放棄する場合には、特定遺贈とは異なり、相続の放棄・承認に関する規定が適用されるため、注意が必要です。具体的には、受遺者のために相続が開始したことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に対して相続放棄の申述を行う必要があります。

包括遺贈を限定承認する場合には、受遺者において相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出の上、限定承認の申述を行うことになります。

 

終わりに

遺贈は、遺言によって行う必要があるため、遺贈をご希望される場合には、予め民法が定める要式を備えた遺言を作成しなければなりません。

遺言の作成においては留意すべき点が多々あり、相続人と第三者である受遺者との間に確執があったり、相続財産が複雑多岐にわたるような場合には、遺言執行者に弁護士を選任することや遺留分侵害額請求への配慮等も必要になります。

ご自身の財産を将来混乱なく引き継ぐことをご希望される方は、当事務所までご相談下さい。

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